巡り合いの中で
「暫くは見守る」
「で、どうしたらいいのか……」
「故郷か?」
「そう」
「こればかりは、条約が関わってくる」
「そうだね」
「まあ、あの娘の話もいいが、覚えているか?」
「何が?」
いまいち何を言っているのか理解できないらしく、セネリオはミルクがたっぷり注がれたフレークを食べる手を止めると、首を傾げつつ父親の顔を凝視する。
息子の態度にアゼルは嘆息すると、今日は何が予定されているのか簡略的に話し出す。
刹那、セネリオの顔が引き攣っていく。
「……嫌だ」
「そう言うな」
「乗り気じゃ……」
「毎回じゃないか」
「父さんは?」
「先方が、煩く申し込んでくる」
「同じじゃないか」
息子の発言どのように返答していいかわからないらしく、アゼルは沈黙してしまう。
そもそもこのお見合いは、相手側の一方的な情熱によって成り立っている。
多くの惑星がイシュバールと内縁関係になってしまえば利点が多いと考え、年頃の娘を貰って欲しいとアゼルに頼み込む。
勿論、中には性格がいい子も含まれているが、その裏側に見え隠れする策略を思うと、アゼルはいい顔をすることができない。
いや、根本的な原因はセネリオに存在し、25歳になりながら特定の彼女を作ろうとしない。
その結果、お見合いの申し込みが後を絶たない。
「誰かいないのか?」
「いない」
「いい加減、作れ」
「と、言われても……」
「作らないと、煩いままだ」
セネリオは父親が言いたいことは理解できるが、好意を持つ相手がいないのだから仕方がない。
今のところ趣味に没頭している方が面白く、時に街に繰り出してはオープンカフェでお茶と甘い物を食べるのもいいと考えていた。
しかしアゼルや彼の側近にしてみれば、相手が決まらないのは一大事。