巡り合いの中で
セネリオは一人息子なので、イシュバールの跡継ぎは彼しかいない。
その跡継ぎは未婚で、尚且つ誰とも付き合っていない。
それを周囲が知っているからこそ多くのお見合い話が舞い込むのだが、いかんせん本人が乗り気ではない。
といって、いつまでも独身を続けるわけにもいかない。
いい相手を見付け、いずれ結婚を――
それが、多くの者の願い。
「逃げるな」
「それは、難しいかも」
「気に入らないのなら、後で断ればいい。だから、少しでいいから会うんだ。最初から、会わずに断ることはできない」
「早く結婚してほしいんじゃ……」
「上げ足を取るな」
「わかっています」
息子の素っ気ない言い方に、アゼルは肩を竦めるしかできない。
言葉では「早く結婚してほしい」と願うが、だからといって気に入らない相手と結婚してもその先に待っているのは不幸の二文字。
できるのなら気に入った相手と結婚するのが一番だが、その相手はいまだに現れない。
本当に、運命の相手はいるのか。
流石に何度も見合いをしていると、その部分が心配になってしまう。
世の中、運命同士の相手は赤い糸で結ばれている――という話が存在するが、セネリオの赤い糸は途中で切れてしまっているのではないかと、アゼルは本気で考えてしまう。
それほど、息子の見合いは難関そのもの。
「で、今回の相手は?」
「惑星オーランド。其処の大臣の末娘だ」
「年齢は?」
「27だ」
「年上……か」
「年下がいいか?」
「いや、そういう意味じゃ……」
「その者は、美人という話だ。まあ、先程も言ったように一度は会うんだ。いいな、これは命令だ」
「……わかりました」
乗り気ではないことを前面に表した返事の仕方に、アゼルは嘆息してしまう。
どのような人物がいいのか明確に言ってくれれば、それに合った人物を見付けてくるのだが、セネリオは一切自分の好みを話すことがしない。
それも相俟ってか、アゼルの苦労が終わることがない。