巡り合いの中で
イエスマンはいらない。
だが、それを口にすることはしない。
「どうだ」
「何が……ですか」
「気に入ったか?」
「……いえ」
「何が悪い」
「そうですね……」
それに対しセネリオは、曖昧な言い方しかできない。
本当なら面と向かって気に入らない部分を指摘した方がいいのだが、それを行ってしまったらこれからの惑星間の関係に影響してしまう。
いや、それ以上に父親の小言が煩いので、このような言い方になってしまう。
セネリオの話に唖然となったのは相手側で、何としてでも婚姻に取り付けたいのか必死に食い掛かる。
しかしそのようなことをされればされるほど、セネリオの気持ちは引いてしまう。
見合い相手はシミュレーションの失敗が相当堪えているのか、先程から顔色が悪い。
「父さん」
「何だ」
「行く」
「……仕方ない」
「後は……」
「わかっている」
見合いの途中で退席するのは失礼そのものだが、そもそもセネリオは最初から乗り気ではない。
無理矢理この場所に連れて来て、強制的に見合い相手と対面させている。
それに、話は全く盛り上がらない。今までよく持った――というのは正直な感想で、アゼルは息子の退席を許した。
失礼します。
それだけを言い残すと、セネリオは退席する。
突然の退席に呼び止めの声音が響くが、セネリオの耳に届くことはない。
ドアが閉まった瞬間、嘆きと慟哭が混じった声音が放たれる。
この瞬間、見合いが失敗しことが証明され、セネリオの気分を害したことが確定する。
(……全く)
目の前で泣き叫んでいる姿を見ていると、アゼルは同情心が湧き出してくる。
しかし同情したところで、相手の傷を更に抉ってしまうことはわかり切っている。
また、同情から結婚に至ってもセネリオの性格が性格なので、甘い結婚生活とはいかず不幸は目に見えている。