巡り合いの中で
アリエルが暮らしていた世界でも、レナ姫に無礼な発言をすればそれ相応の罰が待っている。
此方の世界ではどのような処分が下されるかアリエルは知らないが、いい結末は待っていない。
不審者は排除――
その言葉が、脳裏を過ぎる。
アリエルが自分が仕出かし過去を振り返っていると、セネリオが声を掛けてくる。
それは今の状況を尋ねるものであった。
「どのような意味で……」
「暇なら、付き合って欲しい」
「何処かへ出掛けられるのでしょうか?」
「いや、そういう意味じゃない。暇だったら、話し相手になってほしい。アリエルの暮らしていた世界とか、興味がある」
「少しでしたら……」
「なら、大丈夫だ」
そう言うと、再び空いているベンチをペシペシと叩く。
流石に二度目の誘いは断ることができないので、アリエルは躊躇いつつもセネリオの横に腰掛ける。
やっと誘いを受け入れてくれたことにセネリオは表情を綻ばせると、アリエルの世界に存在する「乗り物」について、あれこれ質問しだす。
「確か、馬車と徒歩か」
「ですが、馬車はお金持ちの方しか……」
「アリエルは?」
「姫様の御付きの時に、ご一緒に。それと、此方の世界には馬車は無いとお聞きしましたが……」
「無いよ。馬車は、記録の中に存在しているといっていい。今は、もっと効率のいい移動手段がある」
「それは、一体……」
馬車以外便利な乗り物を知らないアリエルにとって、セネリオが言う「効率のいい移動手段」の意味がわからない。
ただ首を傾げつつセネリオからの言葉を待っていると、聞いたことのない爆音が彼女の耳に届く。
反射的に音が聞こえる方向に視線を向けると、空中を飛ぶ物体の存在に気付く。
「あれは、鳥でしょうか」
「鳥?」
セネリオはアリエルが指示している方向に視線を向け、彼女が疑問を抱いている物の正体を探る。
しかし彼女が「鳥」と表現している物体は生き物ではなく、イシュバールが所持している戦闘機。
このような物を見るのは勿論はじめてなので、アリエルの瞳が輝いていた。