巡り合いの中で

 陽光を紫のキャノピーで反射させながら、青空を舞う漆黒の戦闘機。

 名前は〈ノーランド・デルタ〉といい、セネリオやアゼルを守護する直属の護衛軍が駆る機体だ。

 そしてこの護衛軍に所属しているのがライアスで、セネリオと仲がいいという意味で専属の護衛に等しい。

 現在、飛行訓練を行っているのか、続いて複数の戦闘機がセネリオの視界に映り込む。

 この中に、ライアスがいるのか――と、上空を眺めつつ考えていると、アリエルが「此方の世界の鳥は、大きな声で鳴くのですね」という予想外の言葉を発し、セネリオを驚かせた。

「あれは……」

「何か、おかしなことを言いましたか?」

「かなり」

「鳥ではないのですか?」

「鳥というか、生き物じゃない」

「意味が……」

「そうか! アリエルの世界には、まだ空を飛ぶだけの技術がないのか。まあ、馬車……だものな」

 流石に面と向かって言うのは失礼と判断したのだろう、最後との台詞は小声で呟く。

 する「空を飛ぶ」という部分にアリエルは食い付き、この世界には空を飛ぶ物があることに驚く。

 彼女にとって空を飛ぶのは鳥以外知らず、それ以外のモノが飛ぶこと自体有り得ない。

 しかし、セネリオの話では先程上空を飛行していた物体は、人間の手によって作成された物。

 そして漆黒の物体の中には人間が搭乗し、自由に操っているというのだから衝撃以外のなにものでもない。

 いや、それ以前に「飛ぶ」という知識がないので、説明されても理解できない。

「クレイドも、乗られるのですか?」

「時々」

「では、操ることも」

「それは無理」

「クレイドは、何でもできると……」

「できることと、できないことがある。あれを操れるのは……アリエルが知っている範囲では、ライアスだ」

「凄い方なのですね」

「ライアスは、凄いよ。操縦の腕前は高く……護衛軍の中では、常に上位にいると聞く。勿論、それ以外の能力も優れている。信頼もあるし、いい相談役で……同年代で友と呼べるのは、あいつしかいない。口煩い時もあるけど、そういう関係って結構有難いと思っている」
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