巡り合いの中で


 言葉で示した通り、セネリオにとってライアスはいい友人。

 周囲は〈後継者(クレイド)〉と呼び、一歩引いて接してくるが、ライアスの場合は違う。

 勿論、最初からこのような関係ではなかったが、今はセネリオの身を第一に考え、主従関係を超え面と向かって意見してくれる貴重な存在。

 ライアスの話題に、セネリオは過去の出来事を思い出す。

 あれは、いつのことか――

 それは、数年前の出来事。

 元々、ライアスは軍人として働いていたが、護衛軍所属ではなかった。

 しかし今、彼が護衛軍に所属している背景には、セネリオの意向が関係している。

 同年代で話し易く、何処か他の者と違っていた。

 何事も親身になってくれ、必死に任務を全うする姿が印象的だった。

 それは表立っての理由で、本当の理由は他に存在する。

 それがある意味で決定的だったのだろう、セネリオは父親に頼みライアスを護衛軍に移動させてもらった。

 彼が自ら持つ権力を行使したのも、これがはじめてといっていい。

 だから当時は、大騒ぎになったことを覚えている。

「それとライアスの行動は、すまないと思っている。立場が立場だから、仕方ない。悪気があったわけじゃないし、正体さえわかれば威嚇はしてこない。打ち解ければ、いい奴だよ」

「それは、わかる気がします」

「そう?」

「何と申しますか、素敵な関係です」

「姫君とは?」

「姫様のことは、敬愛しています。ですが私のような者が、あれこれと言える立場では……」

「おかしいかな?」

「えっ!?」

「普通は、主従関係を崩してはいけない。だけど時には羽目を外したいし、対等に話したい」

 だから立場を思い、適切な意見を言ってくれたことは有難いとセネリオは話す。

 その言葉によって先程の無礼な行動を思い出したアリエルは、顔を微かに紅潮させ俯いてしまう。

 そんなアリエルの姿にセネリオは「見合い相手も、話し易かったら……」と、心の中で呟く。

 しかし現実は甘いものではなく、見合いを申し込んでくる相手は似たり寄ったり。

 自分を好意的に見せようと必死になり、自己を隠す。結婚とは何か、将来のパートナーとは何か。

 いまだに明確な答えを見付けることができないセネリオにとって、見合いは無意味に等しかった。
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