巡り合いの中で

「何が食べたい?」

「お任せします」

「なら、チョコレートパフェとか」

「チョコレートパフェ?」

「このくらいのサイズの容器に入っている食べ物で……まあ、説明するより実物を見た方が早い」

 チョコレートパフェがどのような物かわからないアリエルだったが、セネリオのオススメということで素直に頷く。

 彼女からの返事にセネリオはベンチから腰を上げると、通信を繋ぎセリナを呼び出す。

 そして一通りの経緯(いきさつ)を話しアリエルの外出許可を貰おうとするが、セリナはいい表情をしない。

 セリナが気にしているのは「アリエルを勝手に連れ出す」ではなく「セネリオが護衛なしで出掛ける」という点だった。

 しかしアリエルと二人でチョコレートパフェを食べに行きたいセネリオにとって、護衛は邪魔に等しい。

 だが、流石に本音は口にできないので、言い訳を繰り返す。

 セネリオの言い訳に、セリナは折れるしかなかった。

 それに目的がハッキリとしているので、トラブルが発生しても対処しやすいと判断したからだ。

 セリナからアリエルの外出許可を貰ったセネリオは一方的に通信を切ると、いそいそといつも通っている店へと急いだ。


◇◆◇◆◇◆


「これが……」

「そう、チョコレートパフェ」

「こんなにいいのでしょうか」

「いいもなにも、これが普通のサイズ」

「食べて……」

「どうぞ」

「いただきます」

 美味しそうなチョコレートパフェを目の前に、アリエルの目が輝いている。

 彼女はテーブルに置かれている長いスプーンを手に取ると、チョコレートアイスを掬い口に運ぶ。

 刹那、頭に響いたのかアリエルの表情が歪む。

 そして、彼女が発した言葉は「冷たい」というもの。

 そもそも、アリエルはアイスという存在を知らない。

 知らないからこそ普通に食べ、予想以上の冷たさに驚く。

 アリエルの反応にセネリオは、今何という名前の食べ物を口にしたのか説明し、慌てて食べると頭痛を有すると注意を促す。

 その説明にアリエルは身構えると、危険な食べ物なのか心配しだす。
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