巡り合いの中で

「危険じゃないよ」

「ですが、頭痛が……」

「それは冷たい物を一気に食べると起こる現象で、特に問題はないよ。といっても、頭痛は困るよね」

「少しずつ食べれば、大丈夫なのでしょうか」

「溶けない程度に」

 セネリオの説明にコクコクと頷くと、再びチョコレートアイスを口に運ぶ。

 甘くて冷たくて――体験したことのない感覚に、アリエルの頬が緩む。

 一瞬にしてチョコレートパフェの虜になったのかアリエルは美味しそうに食べ続け、一方セネリオはパフェの説明を続ける。

「姫様に……」

「姫様?」

「きっと、喜ばれます」

「アリエルの世界って、甘い食べ物は?」

「あります。ありますが、これほど種類は多くないです。それに甘い食べ物を食べられるのは、高貴な身分の方々で……」

「一般的じゃないんだ」

「ですから、このように普通に食べられることが驚きです。それとチョコレートパフェ、美味しいです」

「そう言ってもられえると、誘った甲斐があるよ。この店は、チョコレートパフェ以外の菓子も美味い」

 セネリオは込み入った仕事が終了すると、この店にチョコレートパフェを食べに来ている。

 定期的に顔を出すので店の者とは顔見知りで、いつも外から見られないようにと専用の席を用意してくれる。

 そのお陰で気兼ねなく長時間滞在することができるので、セネリオにとっては有難かった。

 まさに、お気に入りの店。

 そのような店に連れて来て貰ったことに、アリエルは恐縮してしまう。

 それに対しセネリオは「たまには、誰かと一緒に来たい」と、話す。

 都合がいい時はライアスを呼んで一緒に来ているが、大体が堅苦しい話になってしまう。

 だから、のんびりと話ができるアリエルの存在は大きいという。

「わ、私は何も……」

「知らない世界の話をしてくれる」

 数多くの惑星と交流を持っているとはいえ、未開惑星は条約上好き勝手に調べるわけにはいかない。

 といって興味がないわけでもなく、だからこそ未開惑星から来たアリエルの話は好奇心を擽る。

 そう語るセネリオにアリエルは頷き返すと、徐に外へ繋がる扉に視線を向けた。
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