巡り合いの中で
「私こそ……」
「どうした」
「このような世界が、存在していたとは……」
アリエルがイシュバールに迷い込んで二週間が経過したが、いまだに驚きの連続である。
見る物触れる物が全て新鮮で、どのようにして利用し作られているのか疑問を抱く。
侍女仲間のお陰で生活の中で使う機械類や雑貨類については学習したが、だからといって全てを知ったわけではない。
その証拠にこの店に来る途中も、アリエルは「あれはどのような物なのですか?」と、セネリオに質問し続けた。
そのことを思い出したのだろうセネリオはクスっと笑うと、好奇心旺盛なことは悪いことではないと話す。
また、好奇心がなければ文明も文化も発展しないと続ける。
「私が暮らしていた世界も……」
「いずれ、こうなる」
「どれくらいでしょうか」
「それはわからない。ゆっくりと一歩ずつ、焦ってもいいことはない。ただ、確実に発展はしていく」
「空も飛べるように……」
「なる」
その一言が余程嬉しかったのだろう、アリエルの表情が緩んでいく。
しかし瞬時に、アリエルの顔から笑顔が失われる。
何故なら盛られているアイスクリームが溶け出し、一部分が流れ出していたからだ。
アリエルは慌ててその部分を掬うと、口へ運ぶ。
その一連の動作を眺めていたセネリオも溶けかけているアイスクリームを掬うと口へ運び、味わっていく。
「レナ姫……だったかな」
「はい」
「一度、会ってみたい」
「とても素敵な方です」
「アリエルの話を聞いていると、そう思える」
「ただ……」
「行方不明」
「今、どうしていらっしゃるか。無事に城にお戻りになっていれば、いいのですが。それが、心配で……」
アリエルの不安を取り除くことができればいいが、条約上干渉はできない。
いや、それ以前にアリエルが暮らしていた惑星の位置が掴めない。
余程遠い場所にあるのか、手掛かりが少ない中での発見は難しい。
また女性慣れしていないので、セネリオは気の利いた言葉を言うことができない。