巡り合いの中で
これほどの深い傷を負っているのだから、何か重大な事件に巻き込まれた――と考えるのが利口だ。
いや、それ以前に事件が発生したというのなら大々的に取り上げられる。
事故や事件が発生すれば必ずニュースで報道され、多くの住民の目や耳に焼き付けられるもの。
しかし、それさえ報道された形跡がない。
それに少女が出現したとされている転移装置は定期点検を行い、何より一週間前に点検を行ったばかりなので故障は考え難い。
また、これらの機械を意図的に破壊した場合、罪に問われるので住民が意図的に行うことはないだろう。
このような便利な代物を破壊してしまえば、自分達の生活に支障をきたしてしまうことを多くの者が理解している。
そして故障が生じた場合、彼等の方から修理の依頼をしてくる。
若者は住人が無碍に扱い破壊したとは思えないし、思いたくないというのが本音であった。
「それと……」
「何?」
「何と申しますか、怪しい部分が……」
「それは?」
「少女の姿です」
男からの話では少女が纏っていた服は大量の水分を含み、全身が土で汚れていたという。
だが、ここ数日一滴も雨は降っていない。
自ら大量の水を頭から被って土の上で転がった――とは考えられないので、男が話す少女のずぶ濡れの格好は有り得ないものといっていい。
「見解は?」
「もしかしたら、この惑星(ほし)の……いえ、そのようなことは考えたくないのですが、どうも……」
「部外者か」
「有り得ます」
「それが本当だとしたら、大事になってしまう。不備で済まされる問題ではなく、もっと他の……」
若者の発言に、男の表情が徐々に曇っていく。
高いレベルでのセキュリティーで監視されているこのエリアに、どのようにして立ち入ってというのか。
セキュリティーの隙を付いて――と考えられなくもないが、もし本当に隙を突かれて侵入されたというのなら一大事。
謎の少女の登場と共に、あらゆる面で慌ただしさが増していく。
少女の所在の調査の他に、セキュリティーのチェックとは――
だからといって嘆いていても物事が進むわけではなく、ひとつひとつ片付けていかないといけないと若者は言い、複数の科学者に支持を出す。