巡り合いの中で

 急いで、依頼者を――

 リリアの精神状態を落ち着かせる為に別の場所に隔離し、科学者達はガルシアの状況をチェックしていく。

 幸い、ガルシアは一命を取り留める。

 しかしこの件は、溝を更に深める。




「夫婦って、何だろう」

 そのように尋ねたのは、セネリオだった。息子の質問に対しアゼルは、暫しの沈黙を続ける。

「愛のない結婚だって。歳の離れた結婚は、相手の地位と金を求め……裏では、愛人を作っていた」

「……そうか」

「そういう結婚って、好まないよ」

「それは、相手次第だ」

 世の中は、数多くの夫婦が存在している。

 その中にはガルシアとリリアの夫婦のように、歳の差結婚を行っている者もいるが、上手くやっている人物も多い――と、アゼルは説明する。

 だからあの夫婦が「特殊」と話すが、いい言葉が見付からないのだろう曖昧な言い方になってしまう。

「僕は、あのような……」

「いい人を見付けろ」

「今は……」

「あの娘は?」

「娘?」

「アリエルだ」

「ああ、彼女は……」

 そこで、セネリオは言葉を濁す。

 いつか結婚をしないといけない立場とは理解しているが、セネリオはいいと思える人物に出会っていない。

 目上の人物に対しても臆することなく、物事を言ってくれるアリエルは鮮明だが、彼女とはいい友人になれるのではないかと考えていると、苦笑しながら父親に話す。

「そうか」

 息子が異性を連れ何処に行った――と聞いた時、アゼルはやっと恋愛に目覚めてくれたのかと期待したが、いかんせんセネリオは「愛」より「友情」の方が強かった。

 このままでライアスのような関係になってしまうのではないかと、別の意味でアゼルは不安になってしまう。
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