巡り合いの中で
愛と友情の違い。
それを明確に説明しないといけないが、果たしてセネリオがきちんと理解できるかどうか怪しい。
交際するより友情の方を選択し、仕事に熱を上げる。
その情熱の一部を異性に向けて欲しいとアゼルを含め多くの者が願うが、親の心情を息子が理解することは――ない。
しかしそれ以上に考えないといけないのが、今回の出来事。
歳の離れた夫婦の冷め切った一面を見て、結婚することに嫌悪感を抱かなければいいとアゼルは不安視する。
アゼルは表情に出すことはしないが「とんでもない夫婦が依頼者として来た」と、珍しく心の中で愚痴る。
「で、どうしたらいいかな」
「妻の方か」
「夫を殺そうとした」
「殺人未遂だ」
「母星に報告」
「それがいいだろう」
「あの夫婦、どうなるのだろう」
それについてアゼルは嘆息すると、あれだけのことをしたのだから離婚は間違いないと説明する。
ガルシアが持つ権力と金を狙って結婚したことは褒められなくもないが、あれだけ年齢が離れているのだから、どのような意味を持って近付いてきたのか判断できるもの。
わかり切って結婚したというのなら、ガルシアも相当な人物。
結局、似た者夫婦――という言葉が似合う。
「ハーナス殿は、どうなった」
「処置が早かったので、助かった」
「それは良かった」
「迎え、呼ばないと」
「そうか、夫人があれか……」
「こういうのは苦手だから……」
「わかっている。説明は、やっておこう。お前が説明すると、ややこしくなって仕方がない」
「ややこしいって……」
「なら、やるか?」
父親からの切り返しに、セネリオは瞬時に頭を振る。
また、この場所にいると本当に自分でやらないといけなくなると考えたのだろう、踵を返しそそくさと退室してしまう。
息子のわかり易い行動にアゼルは肩を竦めると、ガルシアの故郷アルジャーナに連絡することにした。