巡り合いの中で

 アゼルの適切な回答に、セネリオを捜していた科学者は感動を覚える。

 これで行き詰っていた部分が解消すると喜び、感謝する。

 これくらいで喜んでくれることにアゼルは苦笑するが、悪い気分はしない。

 説明を受けた科学者はアゼルに向かい頭を垂れると、踵を返し仲間がいる場所へ戻って行く。

 一人取り残されたアゼルは一気に疲れが噴出したのだろう、盛大な溜息を付いてしまう。

 あらゆることが、疲労に繋がる。

 特に、息子の将来が心配。

 しかし逃げた息子を呼ぶことはせず、アゼルは溜まっている仕事を進めることにした。

 だが、心の中は激しく複雑だったのだろう、途中で仕事を停止し、再び盛大な溜息を付いていた。


◇◆◇◆◇◆


 父親から逃れたセネリオは、アリエルと会話を行った中庭で、一人青空を眺めながらのんびりとしていた。

 ライアスかアリエルに愚痴を聞いて貰いたい気分だったが、生憎二人は仕事中。

 権力を使って強制的な呼び出しをしたくなかったので、一人で時間を潰していた。

 だが、のんびりしていても暇なので自室へ戻り、趣味であるプログラム作成を行うことにした。

 ベンチから腰を上げ、中庭から出る。

 ふと、タイミングを見計らったかのように、ライアスから連絡が入る。

 友人からの連絡が嬉しいが、その反面何か言われるのではないかと、反射的に身構えてしまう。

『クレイド』

「うん?」

『側に、仲間が……』

「ああ、そうか」

『今、お時間は……』

「平気だ」

『でしたら、今から其方に向かいます』

「仕事は、いいのか?」

『はい。今は――』

 歯切れの悪い言い方であったが、ライアスからの誘いということで、セネリオは居場所を教える。

 ライアスは自分から其方に行くので、その場から離れないで欲しいと念を押すように言う。

 いつになく真剣な物言いにセネリオは不信感を覚えるも、特に追及することはしない。
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