巡り合いの中で

 十数分後――

 ライアスが駆け足で、セネリオのもとへやって来る。

 友人がやって来たことにセネリオはいつもの調子で声を掛けようとしたが、ライアスが発する独特の雰囲気を感じ取ったのだろう、戦いてしまう。

 反射的にその場から立ち去ろうとするが、ライアスが許すわけがない。

「ど、どうした」

「お聞きしたいことがあります」

「何を?」

「異性と、出掛けられましたね」

「アリエルと一緒に、チョコレートパフェを食べに行った。甘い物が食べたくなり、連れて行った」

「そうでしたか」

 セネリオの口から明確に「アリエルと一緒に出掛け、菓子を食べた」と聞けたことに満足したのか、ライアスの表情が緩む。

 一方、ライアスの表情の意味が掴めないセネリオは首を傾げ、事の重要性がわかっていないのだろう、何をそんなに喜んでいるのか真顔で尋ねる。

「セネリオ様が、アリエルと一緒に出掛けたからです。それについて、皆様が話していまして……」

「いけないのか?」

「いえ、そのようなことは――」

「アリエルは話し易く、一緒にいて面白い。彼女が暮らしていた世界にも興味があり、聞いていた」

「そう……でしたか」

 特別な感情を抱いたからこそ、アリエルを連れ出した――と期待していたが、話を聞いているとどうやら違うらしい。

 セネリオから聞いたアゼル同様に、ライアスも落胆してしまう。

 この件は侍女の話から一気に拡散していき、護衛軍の中でも話題となっていた。

 耳にした誰もが食い付き、目を輝かす。

 特に感情を表面に表したのは中高年で、一部の者は感涙に咽ぶ。

 これでやっと。

 待ちに待っていた。

 しかし現実は、このようなもの。

 ライアスは盛大な溜息を付くと、アゼルとは違いある重要な部分について質問を行う。

 それは「アリエルをどのように思っているのか」というもの。

 ライアスからの突然の質問にセネリオは腕を組むと「自分にとってのアリエルの存在」について、あれこれと思考を巡らす。
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