巡り合いの中で

 しかし当のセネリオは、ライアスの気持ちを理解していない。

 「彼女はいいものか?」と尋ねていながら、自身は彼女を作ろうとは考えていない。

 そもそも「恋愛」について殆ど自覚症状がなく、持っている知識は恋愛マニュアル程度。

 だから周囲が騒ごうと、落ち着いている。

 セネリオの反応にライアスは、周囲があれこれと騒いでも無駄と判断する。

 まず、セネリオに恋愛に目覚めて貰わないといけないのだが、このことを教えるのは実に難しい。

 自分で自覚してくれるのが一番いいのだが、残念ながら今までの生活面から見ると絶望的に近い。

「ライアス」

「は、はい」

「どうした」

「い、いえ」

 どうすればいいか――

 と考えていたからだろう、ついつい厳しい表情で考え事をしていた。

 眉間に皺を寄せていたからか、珍しいライアスの表情にセネリオは声を掛けたという。

 友人からの指摘にライアスは、流石に自身が考えていたことを話すことができないので、適当に誤魔化すことにした。

「彼女のことか」

「……そんなところです」

「なら、行った方がいいんじゃないか」

「大丈夫です」

「ああ、仕事か」

「セネリオ様に、ご迷惑は……」

「心配しなくていい。彼女は仕事ができるし、助かっている。たまに、無理をしているけど……」

「そうなのですか!?」

「知らない?」

「何も……」

 セネリオからの言葉で知った彼女の日頃の仕事事情に、ライアスは心配してしまう。

 科学者という職業はセネリオを見ているので理解しているが、職業が違うのでアドバイスはできない。

 不安感たっぷりのライアスにセネリオは「心配なら、行った方がいいんじゃないか」と、言葉を掛ける。

 ライアスがセネリオを心配するように、セネリオもライアスを心配している。

 だから彼女を大事にした方がいいと、早く行くように促す。

 まさか彼女との関係を心配されるとは思わなかったのだろう、ライアスは焦ったようなそぶりを見せるも、彼女に会いたい気持ちも強い。
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