巡り合いの中で
「一緒に行こうか?」
「いえ、一人で行きます」
「そうか」
「セネリオ様は、どうしますか」
「暫く休んで、自室へ戻る」
普段のライアスなら特にセネリオの言葉に追及することはしないが、第六感が働いたのだろう「自室へ戻る」と言っておきながら、違う場所へ行くのではないか――と、心配する。
いつもと違い追及の手を伸ばすライアスにセネリオは咳払いすると、心配しなくていいと伝える。
「それなら、いいですが」
「心配性だ」
「セネリオ様の身に、何かありましたら……」
「わかっている」
「俺はセネリオ様の性格を存じていますが、周囲の者は……ですので、わかって頂きたいです」
「勿論」
「では、俺は――」
「後で」
必死に語る姿から嘘偽りはないと判断したのだろう、ライアスはそれ以上深く追及することはしなかった。
理解したことを示すかのように頭を垂れると、恭しい態度を見せつつ踵を返す。
そしてセネリオの前から立ち去り、自身の彼女が仕事をしている研究室へ急いだ。
暫くその場で立ち尽くしていたセネリオは、先程の話を思い出したのか、いい表情をしない。
自分にとって、アリエルは――
思えば、心が微かに痛む。
ただ、それがどのような意味を示しているか、後で知る。