巡り合いの中で
それを思い出したのか、アリエルは俯く。
「どうした?」
「クレイドが好むような……」
「好む?」
「お洒落が、わからず……」
「それなら、選んで貰えばいい。生憎、私はそういう方面には疎いから……アドバイスはできない」
「そ、それでしたら……」
「楽しみだ」
恥ずかしい。
という気持ちが強かったが「クレイドが喜ぶのなら……」と考え、意を決する。
一方、アリエルの返事にセネリオは意味有りげな笑みを浮かべる。
そんなセネリオの表情に気付いていないアリエルは、どういう店に連れて行かれるのかと、想像を巡らせながら緊張し続けていた。
◇◆◇◆◇◆
この店。
と言いつつ案内したのは、ネットを用いて調べた店。
何処へ連れて行けばいいかわからなかったセネリオは「若い女の子が好む服」で検索し、この店に行き当たる。
評判のいい人気店なら安心と考えたセネリオはアリエルと共に入店すると、突然の大物の登場に全員が一斉に騒めく。
どう対応していいかわからなくなったのか、誰もがあたふたとしている。
すると店長らしき人物が二人の前に進み出ると「今日は、どのような――」など、しどろもどろになりながらもセネリオ達を歓迎する。
「今日は、彼女の服を選んで欲しい」
「クレイドでは……」
「いけないか?」
「い、いえ」
アリエルを拒絶されたことにセネリオは、店長を睨み付ける。
睨み付けられたことに店長はアリエルを大事に扱わないといけない客と判断したらしく、数人の店員を呼び特別待遇を行う。
アリエルの服選びを店員に任せたセネリオは、自分はクッションが効いている椅子に腰掛けながら、服選びが終わるのを待つ。
すると周囲がセネリオの機嫌を損ねてはいけないと、あれこれと用意しだす。
飲み物やら菓子やら――用意された代物に、セネリオの顔が引き攣る。