巡り合いの中で
「アリエル」
「は、はい」
「今、何をしている」
「服を選んで頂いて……」
「可愛い服?」
突然のセネリオの登場に、アリエルの声音は裏返ってしまう。
今、彼女は個室で店員と向き合い、流行の服と呼ばれている物を眺めていた。
セネリオの姿にアリエルと話していた店員は過度に緊張しているのだろう、急にオドオドしだし、言葉がしどろもどろになってしまう。
「私は、いないと思っていい」
「そ、それは……」
「クレイドは、お待ちしていた方が……」
言いたいことを言えないでいる店員に代わり、アリエルが代弁する。
彼女の代弁に納得したのか、セネリオは間延びした声音を発すると、二人の前から立ち去ろうとする。
しかし言いたいことを言い忘れたのだろう、途中で足を止めると「スカートは選ぶように」と、注意する。
「ス、スカート」
「いけない?」
「まだ、勇気が……」
「残念」
本音ではアリエルのスカート姿を見たかったが、無理強いしてはいけないとセネリオは落胆する。
だが、それでも諦められないのだろう「本当に」と、食い付いて来る。
いつものセネリオと違う姿にアリエルは目を丸くするも、スカートの難易度は高いのだろう頭を振る。
「そ、それでしたら……」
「何?」
「スカートに見える服をご用意……」
「できる?」
「は、はい」
店員の提案に、セネリオの表情が緩みだす。
折角流行の服を購入するのだから、可愛い服を着ないと勿体ないというのがセネリオの考えで、いい服を用意するようにと店員に頼む。
セネリオの頼みに、店員はぎこちないながらも頷く。
その反応に機嫌を良くしたのか「宜しく」と言いその場から立ち去ると、先程休んでいた場所に戻ることにした。
するとセネリオが席を外している間に行ったのか、ショートケーキが置かれていた皿は片付けられ、飲み物も新しくなっていた。