巡り合いの中で
ここまで気を使わなくていいと思うも、彼等にしてみればセネリオをおもてなししないわけにもいかない。
彼等が発する第一声は、決まっている。
勿論これについていい気分はしないが、アリエルに迷惑を掛けてはいけないと今日は我慢する。
そして、三十分後――
アリエルが戻って来る。
「どうだった」
「可愛い服がありました」
「良かった」
「ただ……」
「ただ?」
「枚数が……」
「気にしなくていい」
「お、お値段も……」
「だから、いいって」
そのように言われたところで、アリエルの性格上素直に受け入れることは難しい。
しかし選ばれた服全てを購入するほど持ち合わせておらず、思った以上に一着の値段が高い。
ここは言葉の通りセネリオの財布を頼るのが一番だが、アリエルは先程から申し訳なさそうにしている。
そんな彼女の目の前に差し出したのは、一枚のカード。
そのカードがどのような意味を持っているのか知らないアリエルは首を傾げ、なかなか受け取ろうとはしない。
キョトンっとしているアリエルにセネリオはカードを握らすと、これを渡せば支払うことができると教える。
「支払は一回で……と、言うように」
「わ、わかりました」
セネリオの言葉に頷くと、カードを握り締めながらアリエルは店長のもとへ向かう。
そして言われた通り「一回で」と言い、カードを渡す。
アリエルの発言に店長はセネリオを一瞥してしまうが、その行為が失礼と瞬時に理解したのだろう、慌てて視線を逸らすと支払いを行う。
「今日は、有難うございます」
「いや、いいさ」
支払いを終えカードを返しつつ、アリエルが頭を垂れる。
それに対しセネリオは頭を振ると、自分がそうしたいからアリエルを誘ったと話す。
また、仕事ばかりしていると息が詰まってしまうのでいい気分転換になったと話し、これも全てアリエルと「付き合い易い」が関係している。