不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
卓巳君は私の髪を優しく撫でながら、「どうしようかな……」とブツブツ呟いている。


ごめんなさい。

卓巳君のこと困らせるつもりなんてなかったの。

卓巳君が謝ることなんてない。

私が悪いの。

私が勝手に卓巳君のこと好きになっちゃって。

勝手に期待して……。おまけに試すようなことしちゃったの。

そんな自分が嫌で恥ずかしくて、それで涙が止まらないの。


「昼間、会おっか?」


卓巳君の唐突な提案に私は思わず顔を上げた。


「えっ?」

「夕方から用事あんだけど、昼間なら大丈夫だからさ。それでいい?」


きっとこれは卓巳君なりの気づかい。

だけど、私は『ごめん』と謝られたときよりも傷ついていた。

だってこれでは、昼は沙耶と会って、夜は家族と過ごしていた沙耶の彼氏と同じ。


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