不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
「三百円のお返しです」


お釣りをもらう時、彼女の指がほんの少し触れた。

その指先があまりにも温かくて柔らかくて……。

どうしようもなくみじめに感じた私の指はビクンと震えて、受け取ったはずの小銭を床に落としてしまった。


「あっ」

「申し訳ありませんっ」


私が悪いのに……。
和美さんのせいなんかじゃないのに……。

和美さんは、本気で申し訳なさそうに謝り、慌ててしゃがみこむ。

小銭を拾おうとすると、その一枚がコロコロと転がってレジ台の下のすき間に入りこんでしまった。

とりあえず百円玉二枚を私に差し出し、もう一度しゃがみこむ和美さん。


「んー、取れるかなぁ……」と、もう床に顔がつきそうな位置でレジ台の下を覗きこんでいる。

「あのっ……もう、いいですからっ」


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