不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
店の外に出たとたん、突き刺すような冷たい風が顔に当たる。

それを気にすることもなく、ズンズンと小走りで足を進める。


逃げたい。
一刻も早く和美さんから離れたい。

耳に残る彼女の優しい声や、かわいらしい小さな手の感触を消してしまいたかった。

だけど、横断歩道の信号が赤に変わったせいで足が止まってしまった。


「萌香、大丈夫?」


沙耶が顔を覗きこんでくる。


「あ……うん。ごめんね」

「いや、私はいいけど……」


ダメだ。
沙耶に心配かけちゃう。

できるだけ明るい声を出さなきゃ。


「あはっ、びっくりしたね。もう、ホント私ってタイミング悪すぎるよね。卓巳君へのプレゼントだよ? 卓巳君へのプレゼント買ったら、店員さんが彼女なんだもん。こんなプレゼント、渡せるわけない。彼女のお店のものなんて、卓巳君だって困るよね。きっと受け取ってもらえないよ。それに……」


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