不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
見つめ合ったまま、沈黙。

ほんのわずかな時間が随分長く感じられた。

どうしよう。なにかごまかさなきゃ。

だけど、いくら探しても言葉が見つからない。

かわいた喉をゴクリと鳴らした時、和美さんの唇がゆっくりと開いた。


「……よかった」

「え……?」


和美さんがあまりにもふんわりとにこやかな笑顔を向けてくれたので、私はポカンとするしかなかった。

きっと今、世界一マヌケな顔してると思う。

少なくとも彼女の笑顔を見ている限り、さっきの話は聞かれてなかったようだと、ホッとする。


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