不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
「赤信号」


和美さんはそう言って私の背後を指差す。


「え?」


振り返って、信号機を確認する。確かに今、信号の色は赤だ。


「おかげで追いつきました」


そう言って、にっこり微笑んで肩をすくめる。

なんだろ、このムード。

彼女がこの場にいるだけで、まるで春の陽気に包まれているような気がした。

周りにいる人達をふんわりと優しい気持ちにさせてくれるような、そんな雰囲気をまとった女の子。

ムードメーカーって言葉がふさわしいのかな。


「はい。どーぞ」と、和美さんが差し出したのは100円玉。

「これって……」


さっき私が落としたものだ。

レジ台の下に入りこんでしまったお金。


「あれ、取れたんですか?」



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