不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
「私、自分のことしか考えてなかった。自分だけが傷ついてる気になってた……」


私は今の今まで、和美さんの立場になって考えたことが一度もなかった。


このままじゃダメ。

こんな関係はやっぱりダメなんだ。

あんないい人を傷つけちゃいけない。

勇気を持たなきゃ。

ちゃんと決断しなきゃ……。


握りしめた100円玉はまだ温かい。

和美さんの手のぬくもり、そのもののような気がした。


「ごめんなさい……」


誰にも聞こえないような声で私はつぶやいた。


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