不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
王子と姫
静まりかえった車内にはピリピリとした空気が漂っていた。


車はやがて市街地を離れ、閑静な住宅地の中を通り抜ける。

先ほどまでのクリスマスカラーに彩られたにぎやかな景色とはうって変わって、なんだか寂しい。

お店などはほとんどなく、街灯が暗い夜道を照らしているだけだった。


「卓巳君……」


不安にかられて卓巳君の顔をうかがう。


「ごめんな。ヘンなことに巻きこんで」


卓巳君は冷たくなった指で、さらに強く私の手を握りしめてくれた。

だけど、その言葉や仕草が余計に私を不安にさせる。

卓巳君も緊張してるんだ。

でも、怖いけど……。

卓巳君と一緒だったら平気。

私のピンチには駆けつけるって言ってくれたもん。

卓巳君ならきっと私を守ってくれる。


私は覚悟を決めるとゴクリと喉を鳴らした。


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