不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
やがて車はそのスピードをゆるめた。

ウインカーのカチカチという音とともに、ハンドルは右へ切られた。

吸いこまれるように大きな門をくぐりぬけると、その先には、5階建ての白い建物が見えてきた。


「あ、ここ……」


その場所を理解すると同時に、車は正面玄関前に停車した。

サッと車から降りた山川さんが、後部座席のドアを開けた。


「どうぞ」


一瞬不安になって振り返ると、卓巳君が無理に作ったような笑顔を見せて、うなずいてくれた。

私は車から外に出た。続いて卓巳君も。


玄関ドアの脇の壁に掛かったプレートの文字が目に入った。


【姫川総合病院】

ヒメカワ……病院。


そう、ここは病院だった。

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