不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
診療時間が過ぎているせいか、外来患者の姿はどこにも見あたらなかった。もちろん、入院患者の姿も。

時々すれちがうナースが和美さんに頭を下げ、卓巳君には意味深な視線を向ける。


一体どこへ連れて行かれるの?

卓巳君とこの病院はなんの関係があるの?

いつまで経っても不安は拭いきれない。


やがて、和美さんの足が止まった。


「もう、覚悟決めた?」


両手を組んで、挑発的に、まるで卓巳君が困っているのを楽しんでいるかのような表情の和美さん。


「ああ」


卓巳君は大きくため息をつきながら、すぐ横のドアをうらめしそうに眺めている。

そこには【関係者以外 立ち入り禁止】と書かれたプレートがかかっていた。

卓巳君は意を決したように、ドアを開けて中に入っていった。


「卓巳くっ……」


その後を追おうとした私の腕を和美さんが掴んだ。


「あなたはこっち」


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