不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
「今夜は健全に過ごそう」


卓巳君は自分に言い聞かせるように、うんうんとひとりで納得して歩きだした。


「ダメ」


前を歩く彼のコートをキュッと掴んで、ひきとめる。


「ん?」


どうした?って感じで振り返る卓巳君。


「なしなんて、ダメ。私がきっと欲しくなっちゃう……」


言ってすぐに後悔した。顔も耳もカッと熱くなる。

私ってば、なんて大胆なこと言ってるの。


「萌香ちゃん……」

「いや、あの、その……」


卓巳君は焦る私をそっと引き寄せる。


「じゃ、おのぞみどおりに」


おでこに軽いキスをしてから、もう一度ぎゅうっと抱きしめてくれた。

そして、「うち、帰ろ」と頭上から彼の優しい声。私はただ黙ってうんうんとうなずいた。


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