不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
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病院を出て最寄り駅に向かう間、私達はずっと手をつないでいた。
もう少しも離れたくなくて指を絡ませると、卓巳君もそれに応えてギュッと握りかえしてくれる。
いつもよりゆっくりと歩きながら色んな話をした。
「私ね。卓巳君は和美さんと付き合ってるって誤解してたの」
「へ? オレと和美が? なんで?」
「前に映画の試写会の日に、偶然、ふたりが一緒にいるところ見ちゃったんだ。駅前の雑貨屋さんに入っていくところ。試写会に行けなかったのは、和美さんと会うためだったんだぁって、勝手に落ちこんでた」
「ああ、あれ? あの日は劇の練習があったんだ。オレ、サボってばっかだったからさ、みんなキレまくり」