不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
目にした光景に思わず笑みが漏れた。

ベッドの上には、オレの衣類が散らばっている。

そのそばで、床にぺたんと座って、頭だけベッドに寄りかかるようにして、萌香が眠っていた。ひざの上には畳みかけのシャツ。

どうやら、洗濯物を取り込み、畳んでいる最中に寝落ちしてしまったらしい。


「子どもみたいだな」


思わず頬が緩む。

つきあって二年になる恋人を、オレは今も変わらず愛しいと感じてる。

1ヶ月ぶりに会えたというのに、仕事を片づけるまではどこにも連れていってやれないと言うオレに、萌香は不満ひとつ言わなかった。

それどころか、朝からやってきて、掃除や洗濯など家事全般を手際よくこなしてくれた。

学生時代から住むこの部屋はいわゆるワンルームで、かなり狭い。油断するとすぐに物で溢れてしまうのだ。

今朝まではかなり悲惨な状況だったけど、今は萌香のおかげで、すっきりと片付いている。

とはいえ、狭いのは変わらないんだけど。


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