不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
「そっか。ここ引っ越すんだ」


玄関でブーツに足を入れた萌香がつま先でトントンと床を叩く。

そして何かを思い出したかのような表情でオレの方に振り返った。


「そうそう。夕飯作っておいたから、お鍋の中のもの、よかったら夜に食べて? 肉じゃがだよ。日本食、恋しかったかなって思って」


そんなことまで気を回して、飯の用意してくれてたのか。萌香だって疲れているというのに。

彼女の気遣いを知って、心の中がじわりと暖かくなる。


「ありがとうな」

「どういたしまして」


彼女への愛情がわきあがる。

あー……このまま帰したくねーな。ずっとふたりで一緒にいられたらいいのに。

もしも引越ししたら、一緒に住む?
なんならこの機会に結婚する?

そんな言葉が浮かぶ。


だけど今は言えない。


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