不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
うー、全部見透かされてるし、またからかわれてる。

私だけがあたふたして、彼はいつも余裕があるように見える。

きっと卓巳君て女の子の扱いに慣れてるんだろうな。

自分の行動に女の子がどう反応するか、全部わかってるって感じ。


『オレの舌のテクニック、ハンパねぇし。なんなら試してみよっか?』

ふと、さっきの女の子達との会話が頭に浮かぶ。

卓巳君は、誰とでもこんなことやってるのかな……。

そんなこと考えて、落ち込みそうになる。


「そ……そだ」


私はパッと手を引っこめた。立ち上がって、隣の席に置いていた紙袋を手にする。


「デザートもあるんだよ」と紙袋を探るものの、どういうわけか、そこにはもう何も入っていなかった。

「ごめんなさい」

「え?」

「デザート、忘れちゃったみたい。りんごも持ってきたつもりだったのに……」


言いながら、ハッとする。

そういえば、別容器に入れたりんごがテーブルに置きっぱなしだったような気がする。


もぉ……。
私って、やっぱ抜けてるよね。


「せっかく“りんごうさぎ”にしたのにぃ……」


ふいに卓巳君が立ち上がる。なにがおかしいのか、クスクス笑いながら私に近づく。


「デザートなら、あるじゃん?」


「え?」

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