不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
「なんですぐにエッチしちゃったのかなって。なんであんな風に始めちゃったんだろうって」


あ、ダメだ。涙腺が緩んできた……。


「こんなに好きになるなら、ちゃんと段階を踏みたかったな。アドレス交換して、メールとか電話で連絡取り合って、次のデートの約束とかして。ご飯食べに行ったり、遊びに行ったり。それで私のこともっとたくさん知ってもらって、私も卓巳君のこと知って、ちょっとずつ距離を縮めていくの。そしたら、ちゃんと『好き』って言えた……と思……」


最後のほうは声が震えてうまく言えなかった。


油断したら今にも涙がこぼれそう。

目をパチパチさせて鼻をすすった。

沙耶がそんな私をまっすぐに見つめる。


「なんであの時、すぐにホテルなんて行っちゃったんだろ。私、バカだよ。あんな簡単にしちゃう女なんて、本命にはなれないんだよ……」


もうたえられなかった。涙がポロリとこぼれ、慌てて拭う。

その時、ずっと黙っていた沙耶が口を開いた。


「簡単じゃないでしょ?」

「え……?」


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