不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
「簡単に寝たわけじゃないでしょ? 萌香はさ、気づいてなかったのかもしれないけど、最初から好きだったんだよ、卓巳君のこと」

「最初、から?」

「うん。萌香はその場の勢いだけでするような子じゃないもん。それは私もよく知ってる。初めて会った時から惹かれてたんだよ、彼に。ちがう?」


出会いはあの合コン。

エッチが嫌いだと言った私の腕をつかんで立ち上がらせた卓巳君。

あの時の腕の感触も彼の甘い香りも、昨日のことのように思い出せる。


卓巳君は別に無理やりホテルに連れこもうとしたわけじゃない。

今考えてみれば、いくらでも腕を振りほどいて逃げ出すことはできた。

だけど、私は彼についていった。自分の意思で。

あの時から私は卓巳君に恋してたのかな……。


「今だから言うけどさ。智也と付き合ってる時の萌香はあんまり幸せそうじゃなかったよ」

「え……?」

「智也はさ、あんまり萌香を大事にしてなかったじゃん。それでも萌香は、すっごく健気に尽くしてるように見えてたけどさ……」

「うん……」

「でも、私から見ればさ、萌香もホントに好きなのかな?って、思ってた」


どういうこと? 

沙耶の言ってる意味がわからなくて、私は眉を寄せた。


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