不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
沙耶の言葉が胸に突き刺さる。

たしかに私は、智也にフラれることに怯えていたかもしれない。

だから、嫌われないようにご機嫌を伺ってばかりいた。

それってつまり、彼のことを想ってというよりは、自分のためにそうしていたのかも。

だとしたら、本当に彼のことを好きなわけじゃなかったのかな……。


「体ってさ、結構、正直なんだよね。確かに、相性とかさ、ウマイ・ヘタ……みたいなものもあるかもしれないけど、まずは愛情だと私は思うよ? 卓巳君とヤッて気持ちよかったんだとしたら、そこには愛情があったからだと思う。少なくとも萌香は、最初から彼を好きだったんだよ。初めて会った時からずっと」

「沙耶ぁ……」

「だから、勇気だしてみ? 自分の気持ち、ちゃんと伝えなきゃ。なにも始まらないんだよ?」
沙耶がハンカチを差し出す。

「ん……」


コクコクとうなずく。

沙耶に借りたハンカチは、みるみるうちに私の涙で湿っていった。


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