不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
「どうすればいいの?」

「もうすぐクリスマスじゃん。二十四日のイブの予定、聞いてみれば? 彼女がいなければ、デートぐらいしてくれそうじゃない? 逆にダメだって断られたら、いる可能性大だけど」

「なるほど、ね」


クリスマスイブかぁ。恋人のいる人にとっては、一大イベントだよね。


「ま、最悪、うちみたいなパターンもあるけどね……」

「ああ、うん」


実は沙耶の彼氏はひとまわり以上も年上で、奥さんと子供がいる。つまり、不倫なのだ。

当然、イブに会ってもらえるわけがない。


「ホント、あいつサイテーだよ。去年のイブなんてさ、昼間は奥さんと子供が子ども会のクリスマスパーティーに出かけるとかでさ、昼間だけ私と会ってたんだよ? 夜にはなに食わぬ顔して、家でいいパパやってんだもん。ホント、サイテー……」


沙耶は足下にあった小石をブーツのつま先で軽く蹴った。

その姿は、泣くのを我慢してるようで、痛々しかった。


不倫は決して許されることじゃない。

私も沙耶の恋を手放しで応援してるわけじゃない。

ホントはもっと幸せな恋をしてほしいって思ってる。

だけど、彼女の切ない気持ちもわかるから、なんて言ってあげたらいいのか、なぐさめの言葉が見つからない。

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