不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
和美。

その名を聞いたとたん、私の足は動かなくなる。


顔の前で両手を合わせながら、申し訳なさそうな表情をした女の子が、卓巳君に向かって駆け寄ってきた。

卓巳君と彼女は仲良さそうに笑顔で会話をしている。

時々、ふたりの声がこちらまで届いてくるものの、話している内容までは聞き取れなかった。

ただ、相当仲がいいのはわかった。

卓巳君は「おせーよ」なんて言いながら彼女の頭を小突いたりして、からかっているように見えた。

なんていうか、すごく甘いムードが漂っているような気がした。


やがてふたりは、すぐそばにあるお店に入っていった。

そこは、オーナーが外国から買いつけてくる雑貨を扱うお店。

アンティークの小物やアクセサリー、手作りのおもちゃや絵本などが小さな店内に所狭しと並んでいる。

いかにも女の子が喜びそうな店構えで、私もよくショーウィンドウから中を覗きこんだりしていた。

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