不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
店内にいるふたりはちょうど窓際に立っていたため、外にいる私達からも彼らの様子がよく見えた。

和美さんはなにかを手にして、彼に話しかけている。

そんな彼女に、目を細めて優しい表情を向ける卓巳君。


大きなウィンドウは、まるで映画を映しだすスクリーンのよう。

ふたりは恋愛映画の主人公で、私はそれを眺めることしかできないただの観客。


「なにあれ? あの子、誰? 友達とかだよね」


私と同じくぼう然としていた沙耶が、そこでやっと声を出した。


「さぁ……どうかな。わかんない……」


だけどひとつはっきりしているのは、今日映画の試写会に行けなかったのは、彼女と会うためだったから。

忙しいって言って、私とはいつも部屋で会ってエッチするだけなのに、彼女とは外でこうやって会ってるんだ。

なんだ……。

こぼれそうになった涙を遮るように空を見上げ、ハァと白い息を吐いた。



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