孤独な歌姫 緩やかに沈む
“今夜、飲みませんか”
送り主は君島 有生だった。この間の彼に会った後、気持ちがスッキリしたのを思い出した。
……彼に会ったらなにか変わるだろうか……?
淡い期待を抱いて“いいよ”と返信をした。待ち合わせをしたのは暗い路地に入ったところにある目立たないバーだった。中も薄暗い。
殆ど、まともな食事をしていなかったので私の頬は痩せこけてて。恥ずかしいくらいだったのでこれぐらいの暗がりの方が好都合だった。バーテンダーもいるが、言葉数が少なくて私としても助かる。
心なしかドキドキしている。別に彼が好きなわけじゃないのにドキドキするのはきっと殆ど話したこともないのにこうして約束をして待ち合わせをしているから。
半分飲みかけたブルームーンの入ったカクテルグラスを傾けると紫の液体が暗がりの照明で美しく揺れる。
ブルームーンか……
なんだか、懐かしいな……