孤独な歌姫 緩やかに沈む


 彼とひとしきりお喋りしてから、家に送ってもらった。




 何故か、気持ちがスッキリしている。無性に詩が書きたくなった。家に着くと、靴を脱ぎ捨てたら、靴が片方ひっくり返った。それでも構わずに部屋に入ってソファに鞄を放り投げて、机のライトを点ける。
 部屋が明るすぎるのは好きじゃない。淡くオレンジ色の少し暗めの照明と机のライトだけでテンションはそのままに。



 ノートを出したら、高校生の時から使っているシャーペンを取り出した。これじゃないと調子が出ないんだ。右手ではカチカチと芯を出しながら、左手ではノートをペラペラと捲る。




 そして今の気持ちや思い浮かんだ言葉を書きなぐった。…………うん、繋げてみよう。一心不乱に繋げたら、詩はいつの間にか歌になってた。





 五線譜が入ったノートを取り出して思い浮かんだメロディをまた一心不乱に繋げていく。口ずさみながら、歌が瞬く間にできていくのは気持ちがいい。





 久しぶりだ、こんなに調子いいの。
 あの不調はなんだったんだ。



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