孤独な歌姫 緩やかに沈む
……ありゃ、2日も経ってたのか。
しかも、仕事サボってるし。
般若の形相の吉井マネの顔が浮かんだ。着信件数は41件にも上る。
「うわー、連絡したくなーい」
怒られるのわかってて連絡するのってしんどい。でも、しないわけにもいかないしな……41件の着信履歴をスクロールすると、吉井マネじゃない名前に驚いた。
慌てて過ぎてしまった名前に遡る。
……佐倉さん……その名前に驚きつつ、そして恐い、とも思った。仕事に厳しい佐倉さん。ギュッとスマホを握り締める。
「どうしよう……」
盛大な溜息をついて、もう一度その名前を見た。凝視したところで何か起こるわけじゃないけれど。
きっと何分か経ってた。
いきなりスマホが鳴り出して、「わわっ!」と落としそうになる。
し、心臓に悪いわ、この着信音。
重低音の海外のアーティストの曲にしてる。電話に出る前にビシっと姿勢を正せるように、憧れの曲で目が覚めるように。でも、ビビりすぎてこの始末。
急いでスマホを握り直して通話ボタンを押した。