レンタルな関係。
運転席についた流川。
入れ替わりで裕二くんが後ろに乗り込んで。
一連の物音にも動じない麻紀は、いまだ爆睡。
顔をのぞきこむとヨダレが垂れていて。
「ぶ」
思わず笑うと裕二くんも同じことをして。
「ったく、汚ねーな」
笑いながらもティッシュで口元をぬぐってあげていた。
そんな姿が微笑ましい。
いいなぁ…
要くん、今頃なにしてるだろ…そんなことを思いながら二人を見ていると。
「よし、出発」
流川の声と共に、車は再び走り出した。
どんどん深くなる緑。
土の道はデコボコしていて、車は大袈裟に揺れるけれど、RV車はなかなかスムーズに前進していく。
後部座席に移った裕二くんは、
「ようっ、カエル。久しぶり!」
なんて言って、カエルを抱えて遊んでいたけれど、
そのうち、麻紀なみに首を折って眠りこんでしまった。
時々、裕二くんの頭が勢いよく私の肩にぶつかってくる。
「い、痛い…」
激し過ぎます、その動きっ。
ぶつかるたびにそっと反対側に裕二くんの首を戻す。
…という動きを繰り返していると。
ルームミラー越しに流川と目があった。
「大変だな」
ちょっと上目づかいの目が笑っている。
「お…重いし、痛い」
「ヨダレ垂らしてるぞ、気をつけろ」
「げっ。この二人、こんなに揺れてるのに、なんで爆睡できるんだろ」
「お前も寝てればいいじゃん」
「これじゃ無理だよ」
「じゃ、俺の肩を揉め」
「…は?」
「ヒマだろ? 後ろから肩を揉んでくれ」
「なにそれ」
「言葉通りだ」
「やだよ」
「じゃあ、お前が運転するか?」
「免許持ってないもん」
「じゃ、肩揉み決定」
「決定って…」
ほぼ命令じゃん。
「服にヨダレがつくよりいいだろ」
むううぅ…仕方ない。
私は、カエルをストッパーにして、裕二くんと自分の間に挟み込んだ。
これで、ふらついた裕二くんが私のおしりの前に倒れ込んでくることはないだろう。