レンタルな関係。
自分の布団から、流川の布団の中へ。
ためらいがちにゆっくり移動する。
布団を持ち上げている流川の右腕が、
必然的にカラダの上に落ちてきて。
ふわり。
ひとつの布団に、閉じ込められる。
カエルを抱いているとはいえ、
その距離、わずか数センチ。
流川の左腕は私の首の下にあって。
布団というよりも、
私は、その両腕のなかに身をあずける形になった。
流川の体温で温められている布団のなかは、
要くんのモノでもなく、流川のにおいが広がっていて。
カエルを抱く腕に、チカラが入ってしまう。
前髪に感じる、流川の息づかい。
近すぎる距離に、顔があげられなくて。
私は、カエルの頭に鼻先を押し付けて、じっとしていた。
流川の右腕が、軽く背中を撫で始め、
「寝ろ」
私の前髪が揺れる。
「そんなに緊張すんなよ」
息の気配は、唇の確かな感触に変わって。
「寝るまで起きててやるから」
言葉と一緒に、小さく動く。
「何もしない」
「…うん」
頷くと、背中を撫でる腕の動きが、静かに止まった。
流川は…
きっと、本当に、何もしない。
どうしてか、それが分かる。
胸の奥に広がる安心感は。
だぶん、
私を包む流川からも伝わってくる、緊張のせい。
私たちの関係は…
お互いに、十分理解している。
一ヶ月の、レンタル関係。
それ以上でも、それ以下でもないから。