レンタルな関係。
「ひどい…」


 酔ってるとはいえ…なんでそんなこと、言うの?


「私は…」

「やめろよ、アイツのことは」

「…要くんは…私の」

「俺とヤッちまえば、別れる理由ができるだろ」

「……な…っ」

「情けなくねーのかよ、ほっとかれて」

「…なん…なの」

「俺と寝ろよ」


 流川の口元の傷。

 話しているうちにまた、血が滲んでいて。


 お酒のせいか、充血気味の目が濁っている。

 首筋にかかる息が、熱い。


「…流川、怖いっ! 放してっ」

「…放さない」

「いやっ! こんなの流川じゃない!」

「お前に都合のいい男じゃねーんだよ、俺は」

「いや…っ」

「…寝ろよ、俺と」

「や…」


 やめて、と言いかけた時。


「……っ」


 背中にすばやく回された腕。

 咽元を流川の唇が這って。

 耳のなかに、漏れる息。


「…いやっ」


 カラダをよじっても、力強く抱きしめられた腕はほどけない。

 
「…や…だ」


 どうして…?

 同意がなくちゃしないって…

 言ったのに…


「流川…やだ…」


 流川は顔をあげない。

 首を這う唇が、ゆっくり下におりてくる。


「…っ」


 背中から、両肩をつかんだ流川の手。

 キャミソールの肩ひもを下ろされて。

 汗ばんだ鎖骨にあたる、鼻先。


「…や…め」


 どうして…?

 流川…

 
 


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