レンタルな関係。
 帰る…? って?


「どこに…」

「自分のアパートだよ」

「え…?」

「終わったんだ、改装工事」

「…そう…なんだ」


 振り向かず、玄関先まで歩いていってしまう流川。


「あ、あの…」

「良かったろ」

「え?」

「俺と離れられて」

「……」

「散々振り回したもんな」

「……」

「悪かったな」


 突然のことで、言葉がみつからない。

 陰のかかった流川の背中をみつめたまま、

 私はまだ微かに震える自分のカラダを抱きしめていた。


「ごめんな、ひどいことして」

「……」

「じゃーな」

「…流川」

「お前…あんまり男を信じるなよ」

「…え?」

「素直そうだから、傷つくのはお前だ」

「…なに…が?」


 ふらつきながら、靴をはく流川は。


「ピアス、外しとけ」

「…ピアス?」

「俺との関係も終わりだしな」

「……」

「変に勘ぐられるのもイヤだろ、アイツが帰ってきてから」

「……」


 玄関を開けた流川。


「何かあったら…」

「…え?」

「…いや、なんでもない」

「……」

「じゃーな」

「…流川」


 振り向かず、外に出た流川の後ろ姿は。


 パタン…


 閉じられた扉の向こうに消えた。


 
 しん…と静まる部屋。

 床に転がったカエルと、

 ぼんやりしゃがんだ私。


 ちゃんとしたサヨナラも出来ず。

 

 私と流川は…

 微妙な亀裂を残したまま、


 一ヶ月にあと4日を残して…



 ―――終わった






 
 
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