レンタルな関係。
 首の後ろに回される、要くんの手。

 つけられながら、少し緊張して。

 顔が、熱い。

 久しぶりだから、余計に。

 
「はい、つけた」

「ありがとう」


 肩にのせられた手。

 あったかくて。


 一ヶ月ぶりの要くんの近さにドキドキして、なかなか顔が上がらない私。

 
「唯衣、こっち見てみ?」


 要くんの言葉に。

 ゆっくり顔を上げる。


「うん、いいな」


 満足そうに微笑む顔。

 
「可愛いよ、唯衣」


 肩にのっていた手が、二の腕に下りて。

 くい、と引き寄せられる、胸のなか。


「唯衣」

「…要くん」

「何か…変わったこと、あった?」

「…え?」

「俺のいないうちに、変わったことあったり、言われたり」

「…なんにも、ないよ」

「ホントに?」

「うん…」

「ん」


 どこか安心したような要くんは。

 私の背中に腕を回して。


「唯衣…」


 耳に、頬に、唇を落として。

 両手で頬を挟んで、私を覗き込んだ。


 静かに近づいた顔が、今度は唇を捕らえて。

 深く、長いキス。


「……ん…」


 思わず漏れるため息に。

 足がグラついてしまう。


 そのまま二人、床に倒れこんで。


「…あ…っん…」


 要くんの唇と指に、私は身をゆだねた。


「要…くん…」


 
 ここが、私の居場所。

 一ヶ月前に、ちゃんと戻った。


 好きな人の腕のなかに。


 これで…いいんだ。


 熱い要くんを受け入れて。


 私は、そう感じていた。





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