レンタルな関係。

「あ…」


 
 ドキ…ン…



 ヤバイ。


 めちゃくちゃ緊張してるし。



「もしもし?」


 電話の向こう、

 流川の声は。


 低くて、どこか慎重。

 こちらの様子を、じっとうかがってるような感じで。


「あ、あの…」


 声を出せたのはいいけれど。

 言葉がみつからず。


「……」

「……」


 お互いに黙り込んだまま、流れる数秒間。


 …マズイ。

 
 なにか言わなきゃ。

 自分からかけておいてダンマリなんて。

 
 焦る気持ちとは裏腹に、カラカラの咽からは声がでてこなくって。

 
 ごくん。

 
 とりあえず唾を飲んで、口を開けば。


「…なんだよ、こんな時間に」


 耳に届く声。

 先に切り出したのは流川のほうで。


「…あ、ごめん。こんな時間に」


 私は、同じようなセリフを繰り返してしまって。


「……」

「……」


 また流れる、微妙な沈黙。


「どうした」

「うん…」



「なんだよ」

「うん…」



「うん、じゃ分かんねーって」

「…うん」


 言葉をかけてくれるのは、流川のほう。

 
 私は。

 流川の声を聞けたことに、少しほっとしてたのかもしれない。


 しばらくそうやって。

 流川からかけてくれる言葉をただ耳に入れて。

 うなづくことだけを繰り返していた。




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