レンタルな関係。

「倒れたらどうする? 今、私がここで」

「あ?」


 聞いてみたりして。

 でもどうせ。

 こう、言うんでしょ?


「置いてく」


 やっぱりね。

 そんなこと、しないくせにさ。


「ひどいね」

「当たり前だろ。お前重いし」

「昨日はおんぶしてくれたじゃん」

「気が向いたからな」

「今日は? 気が向かないの?」

「そうそういつも気がむくか、アホ」

「冷たいの」

「甘やかさないと言え」

「ふ~ん」


 前を向いた流川。

 同時に青に変わった信号機。


 人の波が、前からも、後ろからも押し寄せて。

 流川の大きな背中に隠れながら、

 つないだ手にチカラを入れながら。

 また前に、歩きだす。


 渡りながらも。

 流川があくびを繰り返してるのがわかる。

 なんでそんなに眠いんだろ?



 
 駅前広場。

 噴水から吹き上げる水は、夏の光にキラキラ弾けてて。

 周りを取り囲むように座る人たちの顔に、薄い虹を作っている。


「ちょっと休憩しようよ」


 私の提案に。


「ん」


 うなづく流川。


 空いてる石段に腰かけて。

 2人で「ふう~」と息をつく。


 噴水のそばは、吹き上げては落ちる水しぶきのおかげで、結構涼しい。

 流川はおでこににじんだ汗を拳でぬぐってから、

 両手を高くあげて、ぐんと伸びをした。





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