レンタルな関係。
次の瞬間。
つかんでいた私の肩にチカラが加わったと思ったら、ひょいと上半身を起こされた。
「早く。メシ」
普通に言われて。
私は訳がわからず、ベッドからはい出した。
目は覚めてるけど、頭の奥がぼんやりしたままの私は、パジャマのままキッチンにむかって。
冷蔵庫から卵を取り出してコンロに火をつける。
じゅっ、とフライパンが立てる油の音と卵の焼けるいいにおい。
あ、そうそう、食パン。
トースターに二枚、セットする。
そのうち目玉焼きが出来上がって、白いお皿に移して。
チンっと音をあげたトースターからパンを取り出して、振り返って聞いた。
「マーガリンと苺ジャム、どっちにする?」
「ジャム」
はいはい、ジャムね。
えーと、ジャムジャム…っと。
って、おいっ!!
なにやってんの、私?
つ、つい、いつもの調子で…
「ちょっと! なんで私がアンタの朝ご飯作らなきゃなんないの?!」
我に返って言葉を放てば。
「言ったろ? この部屋もそうだけど、アンタも含めてレンタルしたんだって」
「なにそれ…」
「部屋をレンタルしたってことは、当然、この部屋の付属品ももれなくレンタルしてるってことになるだろ」
んな、めちゃくちゃな。
っていうか、私は付属品かっ!
モノじゃないってーの!
「あ、あのねっ! 言ってることがめちゃくちゃだって!」
「しょーがないだろ。これはれっきとした契約だ」
「け、契約って」
「まあ、恨むなら要を呪うんだな」
「……」
キッチンに来たそいつは、私の作った目玉焼きとトーストを取り上げて、さっさとソファに戻る。
私は慌ててそのあとを追いかけて、頭の上から声を振りかけた。
「アンタねっ…」